海外出張デビューを果たしたばかりの筆者が、バンコクで出会った“夜の世界”を体験記風に綴る連載。
3泊4日の短い滞在を通じて、タニヤのカラオケ、ナナプラザのゴーゴーバー、マッサージルームの裏メニュー、そして思わぬトラブルまで…。
旅行ガイドには載っていない、リアルで少し危うい「バンコク夜遊び」の光と影を、初体験ならではの視点でお届けします。
※実話をもとに構成したフィクションです。
第三夜:MP嬢との肉体の対話 ― 香りと沈黙の果てに
バンコク出張三日目の夜。
読者の皆さんも経験があるだろう、昼間の激務で蓄積した疲労と、この街特有のねっとりとした熱気が混じり合い、思考を鈍らせるあの感覚。筆者も例外なく、その状態に陥っていた。
ホテルのシャワーで火照った体を冷やし、無意識にスマホを手に取る。すると、まるで運命の糸に導かれるように「Men’s Spa Bangkok(仮名)」という広告が目に飛び込んできた。いわゆる「タイ古式(男性向け風俗)」と呼ばれる業態の店であることは、その蠱惑的な写真を見れば一目瞭然だった。
画面に映る、薄いシルクのローブ一枚で豊満な乳房の輪郭を浮かび上がらせるセラピスト。その挑発的な微笑みは、単なるマッサージの誘い文句ではない。男の本能を直接刺激する「特別なサービス」という名の約束を、雄弁に物語っていたのだ。
これは癒やしではない。肉体のすべてを解放し、快楽の深淵を覗き込むための、禁断の儀式なのである。
迷いは一瞬。筆者は吸い寄せられるように、画面の「予約」ボタンを強く押し込んでいた。
快楽の祭壇へ
タクシーでネオンの海を泳ぐこと20分。けばけばしい大通りから一本入った、まるで街の秘部に隠れるかのようにその店はあった。
重いドアを開けると、冷気とともにむせ返るようなジャスミンの香りが全身に絡みつく。受付の男が、すべてを見透かしたような笑みを浮かべて「初めてですか?」と流暢な英語で囁いた。この一言で、客の練度を測っているのだろう。
薄暗い店内は、外界の喧騒が嘘のような静寂に包まれている。奥から聞こえるチルミュージックの調べが、これからの悦楽へ入口のように響く。こういう演出が、男の気分を盛り上げるのだ。
案内されたソファで待っていると、「セラピストのノイです」と、一人の女性が目の前に現れた。

体にぴったりと張り付いた白い制服は、彼女のしなやかな体の曲線を惜しげもなく描き出している。歩くたびに揺れる豊かな尻と、制服のボタンをはち切れんばかりに押し上げる胸の膨らみ。穏やかな微笑みの奥に潜む妖艶な光に、筆者の下腹部が疼くのを感じた。
そう、こういう「当たり」を引けるかどうかが、マッサージ店の醍醐味なのだ。
指先が紡ぐ、背徳の物語
個室に通され、ドアが閉まる。世界から二人だけが切り離されたような錯覚。部屋を照らすのは、ベッドサイドのオレンジ色のランプ一つだけだ。
ノイが慣れていそうな日本語で話しかける。
「リラックスしてね」
言われるがままに裸体を晒し、うつ伏せになる。肌を撫でるシーツの感触が生々しい。
やがて、甘く濃厚なオイルの香りが空気を満たし、彼女の手が筆者の背中に触れた。その瞬間、ぞくりと背筋が震えた。それは冷たさではなく、彼女の肌が持つ、熱を帯びた“温度”そのものだった。
指は、まるでそれ自体が生き物のように、首筋から肩、そして背中の中心をゆっくりと下っていく。
だが、賢明な読者諸氏ならお分かりだろう。これは単なるマッサージではない。指はゆっくりと腰を下り、尻の膨らみを慈しむように撫で上げ、そして大胆にもその割れ目へと滑り込んでいく。
「んっ…!」
抑えきれない声が漏れた。ノイはそれに気づきながらも、耳元で「気持ちいい?」と囁くだけ。

彼女は筆者の体を仰向けにさせると、今度は体の前面を攻め始めた。オイルで滑る指が、胸、腹、そして太ももの内側を、焦らすようにゆっくりと撫でていく。筆者の分身は、もはや隠しようもなく硬く熱を持っていた。
ノイはそれを満足げに眺めると、濡れた唇で微笑み、その熱の塊をそっと手で包み込んだ。
ここからが、本当の「マッサージ」の始まりなのだ。
官能の頂へ
「すごく…熱い…」
ノイの吐息が、筆者の欲望の先端にかかる。彼女の指は、巧みにそれを弄び、快感の波を次々と送り込んでくる。シーツを強く握りしめ、喘ぎ声を漏らすことしかできない。
「もっと…欲しい?」
その問いは、もはや質問ではなかった。
彼女は筆者の上にまたがると、その豊満な胸を顔に押し付けてきた。甘い香りと柔らかな感触に、思考が完全に溶けていく。そして、ゆっくりと腰を沈め、筆者の熱く硬いそれを、彼女の濡れた秘部へと迎え入れた。
「あっ…!」
内壁が締め付ける熱と快感に、意識が飛びそうになる。ノイはゆっくりと腰を揺らし始め、そのたびに部屋には卑猥な水音が響き渡った。筆者の腰は、彼女の動きに呼応するように、意思とは無関係に突き上げを繰り返す。
これぞ、肉体の対話。言葉など不要なのだ。
「フィニッシュ…一緒に…」
ノイの喘ぎ声が耳元で弾けた瞬間、筆者の体の奥から熱い奔流がほとばしり、彼女の最深部へと注ぎ込まれた。全身が痙攣し、快感の嵐の中で、意識を手放した。
夜の残滓
どれくらいの時間が経ったのか。ノイは濡れたタオルで優しく体を拭いてくれた。この激しい情事の後とは思えないほど、その仕草は丁寧だった。これぞプロの仕事である。
会計を済ませて外に出ると、バンコクの夜風が火照った体を冷ましていく。街のネオンが、燃え尽きた欲望の残滓のように滲んで見えた。
タクシーに乗り込み、窓の外を流れる景色を眺める。手のひらには、まだ彼女の肌の感触と甘いオイルの香りが生々しく残っていた。
バンコクの夜は、ただ騒がしいだけではない。金さえ払えば、こんなにも深く、静かで、官能的な時間を過ごすことができる。
それこそが、この街が多くの男たちを虜にする理由なのだろう。

