海外出張デビューを果たしたばかりの筆者が、バンコクで出会った“夜の世界”を体験記風に綴る連載。
3泊4日の短い滞在を通じて、タニヤのカラオケ、ナナプラザのゴーゴーバー、マッサージルームの裏メニュー、そして思わぬトラブルまで…。
旅行ガイドには載っていない、リアルで少し危うい「バンコク夜遊び」の光と影を、初体験ならではの視点でお届けします。
※実話をもとに構成したフィクションです。
第2話:ゴーゴーバーの衝撃 ― ナナプラザの熱狂
翌日の夕方。バンコクの街はスコールが過ぎ去ったばかりで、アスファルトからむっとする熱気が立ち上っていた。
ホテルでシャワーを浴びながら、「今夜はどこに行くのか」と考えていた時、同僚の田中さんが言った。
「せっかくだから、今日はナナプラザだな。昨日のタニヤも面白かっただろ? でもあれはまだ序の口だ」
ナナプラザ――名前だけは聞いたことがあった。世界でも有名な歓楽街の一つ。
胸の奥がざわついた。期待と不安がないまぜになり、自然と鼓動が速くなる。
ネオンの迷宮

タクシーを降りると、巨大なアーチ状のネオン看板が目に飛び込んでくる。
「NANA PLAZA」
その下をくぐると、そこは別世界だった。
ビール片手の欧米人、きらびやかな衣装を着た女の子たち、響き渡る重低音のダンスミュージック。建物の中には、三層吹き抜けで何十軒ものゴーゴーバーがひしめき合っている。まるで「大人の遊園地」だ。
「おい、どこ入る?」
田中さんに促され、ひときわ賑やかな店へ足を踏み入れる。
ステージの衝撃
中に入ると、スポットライトに照らされたステージの上で、ビキニ姿の女の子たちが番号札をつけて踊っていた。
腰をくねらせ、観客を挑発するような視線を送る。
照明で汗ばんだ肌がきらめき、音楽に合わせてリズムを刻む。
テーブルに座ると、すぐにウェイトレスが寄ってきてビールを注文する。氷入りのジョッキに注がれた冷たいビールが喉を潤す。だが、頭はどこかぼんやりしていた。目の前の光景に圧倒されていたのだ。
「おい、あの子、モデルみたいじゃないか?」
田中さんが指差す。確かに背の高い美女がステージ中央で自信たっぷりに踊っている。
けれど僕の目は、端っこの方で少し恥ずかしそうに踊る小柄な子に釘付けになっていた。
ナムとの出会い

ウェイトレスにドリンクを頼むと、その子が席にやってきた。
「ハロー、ニホンジン?」
ぱっと笑顔を見せ、僕の隣に座る。甘い香水と、ほのかにシャンプーの匂いが混じった香りが漂った。
彼女の名前はナム。二十歳になったばかりだという。
まだ幼さを残した顔立ちに、挑発的な衣装が妙にアンバランスで、余計に色っぽく見えた。
「ビール、のむ?」
片言の日本語を織り交ぜながら、彼女は僕のグラスに氷を入れてくれる。
指先が触れるたび、心臓が跳ねた。
甘い罠
会話が途切れた瞬間、ナムは自然に僕の膝に腰を下ろした。
細い太ももがぴたりと触れ、体温がじんわり伝わってくる。
「かわいいね」
思わず口にすると、彼女はにっと笑って耳元に顔を寄せた。
「ペイバーする? ホテル行こう?」
唐突な誘いに、頭が真っ白になる。
ビールの酔いが一気に醒め、代わりに血が下半身へと集まっていく。
田中さんが横でニヤニヤしながら背中を押す。
「行っとけ、せっかくだ」
会計を済ませると、ナムは僕の手を取って店を出た。
タクシーの中で
タクシーの後部座席。窓の外をネオンが流れていく。
ナムは僕の肩に頭をもたせかけ、指を絡めてきた。
「ファーストタイム、ナナ?」
「うん」
「ドントウォーリー。アイテイクケアユー」
彼女の笑顔に、不安よりも期待が膨らんでいく。車内の空気は、もうすでに熱を帯びていた。
熱い夜
ホテルの部屋に入るなり、ナムはヒールを脱ぎ捨て、ベッドに身を投げ出した。
「シャワー?」
小悪魔のように微笑む。僕が頷くと、彼女は手を引いてバスルームへ。
熱いシャワーの湯気の中、彼女の指先が背中をなぞる。石鹸の香りと共に、現実感が薄れていく。
目が合うと、彼女はいたずらっぽく舌を出し、すぐに唇を重ねてきた。
全身が火照り、時間の感覚が消えていく。
ナナプラザの熱狂は、そのままホテルの一室に持ち込まれたのだった。
夜明け前

気づけば外は白んできていた。
ナムは僕の腕を枕にして眠っている。すっかり無防備な寝顔は、昨夜の妖艶さとまるで別人のようだ。
胸が締めつけられるような感覚と同時に、「また会えるのか?」という思いが浮かぶ。
ベッドを抜け出し、彼女を起こさないようにシャワーを浴びた。
時間が近づき、部屋を出る時、ナムは振り返ってウインクをしてみせた。
その仕草に、心臓が再び跳ね上がった。
ナナプラザの夜――それは僕の想像を遥かに超え、記憶に刻み込まれる衝撃だった。


